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大学図書館員 坂本です

学びと遊びを考える

近畿大学通信教育部図書館司書コース レポート対策 図書館情報資源概論

グーグルなどの書籍前文データベースの構築という状況の中で、日本の公共図書館が今後どのような電子図書館サービスを提供すべきなのかを論じなさい。 

現在、出版コンテンツの領域にグーグル、アマゾン、楽天、アップルといった企業が参入している。

まず、グーグルの事例では2005年に図書館の蔵書を全文スキャンし、デジタル化する「図書館プロジェクト」を進めた。これに対し、作家協会と全米出版社協会により著作権侵害であるとして提訴されたが、グーグルはフェアユースであると主張し、2008年和解した。その結果、グーグルは書籍データベースを作成し、図書館などの団体および個人に書籍を販売すること、書籍のページに広告を表示することが認められた。また版権レジストリという非営利法人により、グーグルがグーグルブック検索で得た収入の一部を著作権者に還元することになった。

もし、これが実現すれば品切れ・絶版のものも含めて書籍の網羅的なデータベースが出来上がり、人類が蓄積してきた書物というメディアが検索可能な書籍データベースとなる。

これに対して、日本、フランス、ドイツなどの著作権者などによつ異議申し立てなどを受け、グーグルと米国の著作権者で構成する和解団は最終的には新たな和解案を提示し、英語圏で出版された絶版書籍のみが対象となった。その後、グーグルは著作権者や出版社と契約ベースで書籍の全文を閲覧できるGoogle eBooksサービスを発表し日本においても2011年に開始された。2012年12月現在ではGoogle eBooksはGoogle Playの1コンテンツとして統合され、コンテンツはクラウドで保存されるため、ウェブのほか、AndroidiPhoneiPad電子書籍リーダーで利用することができる。(ただし、日本では電子書籍リーダーは未対応)。

次に、国内での電子書籍リーダーの動向では、楽天が2012年7月koboを発売、アマゾンが2012年11月kindleを発売した。そして、それぞれの端末で電子書籍を購入できる、koboイーブックストアやKindleストアが運営されている。しかし、楽天koboイーブックストアでは、kobo touchが発売された7月の時点では日本語書籍の取り扱い数が1万9千冊であるのにも関わらず、3万冊と表記されていた。これに対して消費者庁より優良誤認の疑いがあるとして注意を受けた。(注1)

また、アマゾンkindleストアは日本の特殊な出版業界で苦戦を強いられている。まず、品ぞろえであるが、米国では出版社が紙媒体と電子媒体の著作権を一括管理しており、電子化の作業が進めやすい。しかし、日本では出版社が著作隣接権を持たないため、電子書籍化に当たり著者と個別交渉せざるをえず、効率よく電子化できない。その結果、kindleストアの品ぞろえは中規模書店以下となっている。

次に価格の面でも、米国では紙で25ドル以上の本が、電子書籍で9.99ドルという安さで売られるケースも多いが、日本では契約上の理由から出版社の意向を無視して大幅に値下げすることができないでいる。(注2)

公共図書館による電子出版物の取り組みはそれほど多くない。

まず、2002年6月、北海道・岩三沢氏図書館が「岩波文庫」「東洋文庫」、マンガなど電子書籍の閲覧サービスと市民向けに開始した。

これはイーブックイニシアティブジャパンから電子書籍を一括購入し、図書館内のコンピュータ端末から閲覧するものであったが現在はサービスを休止している。

次に、奈良県生駒市図書館では2005年5月、パブリッシングリンクと提携し、小説作品や実用書約2200タイトル(2006年12月時点)が利用できるというサービスを開始したが、2008年12月末に提供をやめている。

そして、東京都千代田区立図書館では、2007年11月に「千代田Web図書館」として学習コンテンツなどの4000タイトルの提供を開始した。1人につき上限5冊を2週間まで貸出可能で、貸出期限が過ぎるとパソコンから自動消滅する仕組となっている。そして、商業出版社への配慮として印刷はできず、同時に一人までしか借りられないようになっている。

前述のようにグーグルの書籍全文データベース化やアマゾンkindle楽天koboの登場により、資料へのアクセスの利便性は飛躍的に向上している。このような状況で従来の紙媒体の本や雑誌を書架に並べ閲覧・貸出しているだけでは、情報の集積地という図書館の意義は形骸化するおそれがある。

ゆえに、著作権や出版社の利益問題はあるが、これからの図書館の取り組みとしてネットワーク情報資源化は重要であるといえる。

かつ、デジタル化は資料の保存に大いに貢献する。DVDなどの記憶媒体は、どの程度の期間もつのかという保存性は未だはっきりしない。しかしながら、資料の紛失、切り抜きや書き込みによる汚損がなくなるというのはデジタル資料ならではの利点である。

以上のようなデジタル技術の利点を考慮し、利用者に対する利便性を高めることが、次世代に求められる図書館像であると考える。